画像検索意図の検索満足度と評価指標への影響

概要

この研究では、画像検索時にユーザの持つ様々な意図が、画像検索結果に対する満足度や画像検索結果の評価指標に与える影響を分析しています。分析する際は、先行研究により作成され公開されている、画像検索データセット(タスク実行時のユーザの入力クエリ、クエリの画像検索結果に対する満足度、タスクに関する満足度、クエリと各画像の適合度などが含まれる)を使用しています。ユーザの検索意図として、先行研究に基づいて以下のように階層化された意図を分析対象としています。

  • Why型
    • 目的別
      • Locate:資料作成などに使用するために画像をダウンロードしたい
      • Learn:何かについて調べたい
      • Entertain:好きな俳優の画像などを検索して楽しみたい
    • シチュエーション別
      • Work&Study:仕事や勉強のために画像を探したい
      • Daily-life:日常生活のために画像を探したい
  • How型
    • 具体性別
      • Specific:あるテーマについて明確に探したいことがある
      • General:あるテーマに関する一般的なことを探したい
    • 内容別
      • Mental Image:探したい画像が明確に頭に描けている
      • Navigation:探したい画像が頭に描けていない
Image search



画像検索意図が満足度に与える影響
クエリレベルの満足度とタスクレベルの満足度を対象として分析し、以下のようなことが明らかになりました。

  • LearnやWork&Studyといった、より切実度の高い意図のもとではクエリ満足度とタスク満足度はともに低くなりやすい。そうした意図を持つユーザは、1個目のクエリで満足のできる検索結果が得られずに苦労しているので、最初のクエリ投入時にクエリ推薦を多めに出すなどの支援が考えられる。
  • LearnとGeneralの意図を持ったユーザは、一度満足のできる検索結果が得られた後もクエリを入力し続ける傾向にあり、満足のできるクエリを多く入力するほどタスクの満足度も高くなる。したがって、ユーザが満足する検索結果を返せたとシステムが判断できた場合でも、引き続きユーザの検索支援をすることでさらに満足度を向上できる可能性がある。

画像検索意図が評価指標に与える影響
先行研究で、画像検索に特化した評価指標が提案されています。その評価指標では、画像検索結果では画像がタイル状に並んでおりユーザの視線は列の中央に向けられやすいため、列の中央に近い位置にクエリとの適合度が高い画像が多く配置されているほど評価指標の値が高くなります。画像検索意図がその評価指標に与える影響として以下のようなことが明らかになりました。

  • Learn、Daily-life、Mental Imageの意図の元では、提案された評価指標が従来の評価指標よりも優れていた。それ以外の意図では、提案された評価指標と従来の評価指標の間に大きな差は見られなかったため、検索意図に応じた評価指標の提案といった研究トピックが考えられる。

発表論文

  • K. Tsukuda and M. Goto
    Query/Task Satisfaction and Grid-based Evaluation Metrics Under Different Image Search Intents
    Proceedings of the 43rd International ACM SIGIR Conference on Research and Development in Information Retrieval (SIGIR 2020), pp.1877-1880, July 2020.
    [Paper] [Slide]

発表資料

SIGIR2020の発表資料です。