SoC2017 参加報告

2017年6月23日と24日にリクルートテクノロジーズで開催されたSoC2017に参加しました。SoCは「ソーシャルコンピューティング」を指しており、ソーシャルコンピューティングとは、SNSを始めとした、コンピュータを通してコンテンツや人をつなぐ仕組みのことです。SoCでは通常の研究会に比べて、特に企業の方の招待講演が充実しているという特徴があります。今年は、2日間で5件の招待講演があり、1件あたりの発表時間は1時間という充実ぶりでした(プログラム)。以下では、5件の招待講演のうち2件について、簡単な感想とともに紹介します。

仕掛学:データなき世界へのアプローチ

講演者:松村 真宏 先生(阪大)

街中のゴミ箱にバスケットボールのネットを取り付けることで、人がゲーム感覚でゴミを捨てたくなり、ポイ捨てを減らす、というのが「仕掛け」の代表的な例です。講演では冒頭から、世界各地で実際に実施された20個以上もの仕掛けの例をあげていました。沢山の事例を見る中で、思わず行動したくなる仕組みが備わっていれば仕掛けと呼べるのかな、ぐらいに考えていたのですが、例を列挙した後で、仕掛けが満たすべき3つの要件に関する話がありました。以下がその3要件です。

  • 公平性:誰も不利益を被らない
  • 誘引性:思わずその行動を取りたくなる
  • 目的の二重性:仕掛ける側と仕掛けられる側で目的がことなる

ともすると、なんでもかんでも仕掛けなんです、となってしまいかねないのですが、このように要件が明確になっていることで、研究の対象として扱いやすくなっていると感じました。

データを分析することで問題に対処することが盛んに行われていますが、新しい事象に関してはデータが存在しなかったり、人の内面に関してはデータが十分に取れなかったりします。また、ゴミのポイ捨てを減らすためのアイデアは、いくらデータを見ても思いつくものではありません。そういうときこそ仕掛け学が活きる、という話で講演を締めくくられていました。

リクルートグループの現場事例から見るAI/ディープラーニング技術のビジネス活用と、”A3RT” 外部公開の裏側

講演者:奥田 裕樹 さん(リクルートテクノロジーズ)

リクルートテクノロジーズが公開している、機械学習に関するAPI提供サービス「A3RT」に関する講演でした。前半では、どういったAPIが提供されているか、各APIをどのように使うか、を実際に動かしながら説明していました。

後半は、A3RTを作る際の思想に関する話でした。APIを提供する狙いや、サービスとして継続的に提供し続ける上でのポイントといった様々な話の中でも、機械学習によって何をしなければならないかを適切に見極めることの重要性に関する話が印象に残りました。機械学習が流行っているからといって、闇雲に機械学習を使ってAPIを提供するのではなく、機械学習を使うことが有用な問題、解決することがユーザにとって本当に有用な問題を吟味して、APIを提供していることがよくわかりました。講演では、アメリカの心理学者アブラハム・マズローの「ハンマーを持つ人には、すべてが釘に見える。」という言葉と共にこの点の思想が語られていました。

講演のあと、奥田さんと話をする機会があったのですが、このブログの論文紹介記事を見てくださっている、ということを聞いて驚きました。

まとめ

SoCには初めて参加しましたが、研究発表・招待講演ともに、質疑の時間がかなり長くとられている点が非常に良かったです。参加者は100名ほどで規模が大きすぎないこともあり、質問をしやすい雰囲気で、私も何度か質問しました。研究会で複数の企業の方の講演をこれだけじっくり聞けることはあまりないので、来年もタイミングが合えばぜひ参加してみたいです。